事故物件の告知義務が変わったこと売り主として把握できてますか?

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「事故物件」とは、過去に人が亡くなった履歴があることで、市場価値に心理的な影響が生じる不動産を指します。

こうした物件の取引では従来、売主や貸主(オーナー)が買主・借主に「人が亡くなった事実」を伝える「告知義務」が問題でした。

理由は、はっきりした基準がなかったため。

現場の判断に委ねるしかなかったのです。

すると次第に、高齢単身者の入居を避けるオーナーが多くなるなど、市場の円滑な流通が阻害されていく結果に。

そこで国土交通省は2021年10月8日付で「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定し、公表しました。

過去に人の死が生じた居住用不動産の取引に際して宅地建物取引業者がとるべき対応に関し、宅地 建物取引業法上負うべき義務の解釈について、現時点で一般的に妥当と考えられるものを整理。

引用元: 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン

本ガイドラインは過去の裁判例や実務を踏まえ、宅建業法上の告知義務の解釈を整理したものです。

ガイドライン策定の背景には、「心理的瑕疵」(人が亡くなった事実が与える心理的欠陥)が時間経過により希釈・消滅し得ることや、何をもって心理的瑕疵とするかの判断がケースにより違っていた、という状況があります。

本記事では、ガイドラインによる事故物件の告知義務の変更点と、実務上のポイントを解説します。

【執筆者】東将吾

株式会社Vision Bridge 専務取締役 /COO
不動産コンサルタント

東 将吾(Higashi Shogo)

大学卒業後、新卒で東証一部上場企業の商品企画、マーケティング職を経験。その後、大手出版社にて企画営業に従事する。2017年に売買仲介をメイン事業とする不動産会社に入社し、賃貸管理事業部の責任者としてゼロスタートから投資家100名超、約2,000戸の物件運営に携わる。その後同社執行役員に昇格し、複数の新規事業を牽引。IT×不動産、企業DXを推し進める。 2022年に株式会社Vision Bridgeを設立し専務取締役に就任。

事故物件における告知義務が変わったことは市場に浸透していない!

Hands of a businessman creating real estate documents

2021年のガイドライン策定により、事故物件に関する告知義務の範囲が見直されました。

しかし、事故物件に関する告知義務範囲の変更は必ずしも市場全体に浸透していないのが実情です。

ガイドライン公表後、不動産情報サイトや業者間流通システム(レインズ)では「告知事項あり」の表示を見かけることが増えました。


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東 将吾

一方で、現場では依然として誤解や古い認識が残っています。

たとえば、「事故物件でも10年経てば告知しなくてよい」といった根拠のない風説があたかも事実のように信じられていたケースもありました。

ガイドラインによってそうした議論は減少したものの、一般のオーナーや消費者レベルでは「事故物件=人が亡くなったら無条件で告知義務あり」といった旧来のイメージが根強く、新基準が十分周知されていない面があります。

こうした周知不足は、オーナーにとって機会損失や過剰な不安を招きかねません。

逆に情報不足から告知を怠れば、後々契約解除や損害賠償といった深刻なトラブルにもつながります。

正しい知識を身につけ、不要なリスクを避けることが大切です。

事故物件でも告知義務が不要なケース

Asian man taking a real estate quote

主に次の2つのケースでは、原則として告知義務が不要とされています。

確認しておきたいポイント

・室外死亡のケース
・特殊清掃が不要だったケース

以下からは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

室外死亡のケース

取引対象の部屋・建物の外で人が亡くなったケースでは、基本的に告知義務はありません。

ガイドラインによれば、売買・賃貸を問わず「対象不動産の隣接住戸」や「借主・買主が日常生活で通常使用しない集合住宅の共用部分」で発生した死亡事故は、原則として告げなくてもよいとされています。

【告げなくてもよい場合】
(略)
②【賃貸借取引】取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した①以外の死・特殊清掃等が行われた①の死が発生し、事案発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)から概ね3年間が経過した後

引用元: 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン

たとえば、マンションで自室の隣の部屋で自殺事件が起きていたとしても、その隣室は今回の取引物件そのものではないため、通常は告知不要となります。

同様に、マンションの屋上や機械室など居住者が普段立ち入らない場所での事故も告知の対象外です。


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ただし、例外もあります。

ガイドラインでは、隣室や共用部であっても「特に凄惨で広く周知されている殺人事件」のように事件性・周知性・社会的影響が極めて大きい事案については、告知が必要になる場合があると注意喚起しています。

事故物件の範囲が従来よりも限定的・合理的になった点は、オーナー・買主双方にとって安心材料といえるでしょう。

特殊清掃が不要だったケース

物件内で人が亡くなった場合でも、死因・状況によっては告知義務が生じません。

ガイドラインが明確に告知不要としているのが、以下のようなケースです。

区分内容具体例
自然死老衰や持病など、居住中に通常起こり得る死亡老衰、病死
日常生活上の不慮の事故死生活動作の延長で起こる不幸な事故による死亡自宅階段での転落、入浴中の溺死、食事中の誤嚥

どれも、誰にでも起こり得る「通常想定される事態」であり、統計的にも自宅で亡くなる原因の約9割は老衰・病死などの自然死が占めています。

また司法の判例上も、こうした自然死は心理的瑕疵には当たらないと判断されることがあり、買い手・借り手の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと考えられます。

したがって「高齢者が自宅で静かに亡くなった」「日常的な事故で不幸にも亡くなった」程度であれば告知義務は生じないのが原則です。


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ただし、ここでも気をつけたいポイントがあります。

同じ自然死・事故死でも、「特殊清掃」を必要とする事態になった場合は話が別です。

特殊清掃とは、遺体の発見が遅れて腐敗臭の消臭や害虫駆除、大掛かりな清掃・リフォームが必要な掃除のこと。

いわゆる「孤独死」で長期間放置されてしまった場合や、室内で事件性のある亡くなり方をした場合は、たとえ死因自体は病死でも心理的瑕疵になり得るため注意が必要です。

つまり、特殊清掃等が行われる事態になっていなければ告知義務なし、行われていれば、期間等の条件によるものの「告知した方がよい」、と整理することができます。

【注意】「特殊清掃しないほうが得」ではない!

ガイドラインを知ったオーナーの中には「特殊清掃を業者に依頼したと記録が残ると告知義務が生じるなら、自分で簡易清掃して済ませれば『特殊清掃なし』とでき、告知しなくて済むんじゃないのかな?」と考える方がいるかもしれません。

しかしそのような判断は間違いです。

特殊清掃が必要な状態を放置すると、物件にも周囲にも甚大な悪影響が及びます。

たとえば孤独死現場の清掃を怠ると、以下の問題が発生します。

区分内容想定される影響
臭いと害虫の蔓延・遺体から発生した死臭が壁や床に染み込み、放置すると長期間悪臭を放ち続ける
・腐敗により発生したウジやハエなどの害虫は繁殖を続け、集合住宅では他の部屋にも及ぶおそれがある
・近隣への悪臭被害
・衛生環境の悪化
・管理トラブル
物件の損傷・価値低下・強烈な臭いや害虫被害により居住が困難となる
・臭いが建物の構造躯体にまで染み込んだり、設備が汚損されると大規模修繕が必要
・修繕・リフォーム費用の増加
・不動産価値の大幅な下落(最悪の場合は建て替え)
法的リスク・賃貸では原状回復を怠ると貸主が近隣住民や管理組合から損害賠償を請求される可能性がある
・売買では、特殊清掃が必要な事故を隠した契約が後に発覚すると、契約解除や損害賠償に発展するおそれあり
・賠償責任の発生
・信頼失墜
・訴訟へ発展

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「特殊清掃をしなければ事故を隠せる」という発想は危険です。

告知義務の有無は「特殊清掃を行ったか」ではなく、「特殊清掃が必要な事態だったか」で判断されます。

必要であればしっかり専門業者を入れて清掃・消毒し、その上でガイドラインに沿った告知対応を取りましょう。

特殊清掃は、結果的にむしろオーナーの損失を最小化するものです。

臭いや衛生上の問題を残したまま次の入居者や購入者に引き渡せば、いずれにせよ発覚は時間の問題であり、隠し通すことはできません。

プロの判断を仰ぎつつ、誠実な対応を心掛けましょう。

事故物件に対する消費者の心理はこう改善する!

Business woman inspecting real estate

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ガイドラインの明確化によって、事故物件に対する買い手と売り手の心理は変わっていくことが考えられます。

以前のように「事故物件=怖い・避けたい」という一面的な見方が薄れ、事実を正しく理解したうえで判断できる環境が整ってきているのです。

そこで次の2つの立場から、事故物件に対する世間の心理変化を見ていきます。

確認しておきたいポイント

・買い手の場合
・売り手の場合

以下からは、それぞれの移り変わりの内容や注意点などについて詳しく見ていきましょう。

買い手の場合

買い手(不動産の購入希望者や賃借希望者)の心理面について見ていきましょう。
今後は、事故物件に関する情報の透明性が高まることで安心感が増すと考えられます。

ガイドライン策定前は「もしかしたら、何か隠された嫌な過去があるんじゃないの?」という漠然とした不安を買い手が抱きがちでした。

しかし今は、宅建業者は「取引の判断に重要な影響を及ぼす、死に関する事実」があれば、原則として告げる義務を負っています。

さらに、ガイドラインで告知不要とされた場合でも、「絶対に事故物件は嫌という顧客」から問合せがあった場合には、経過年数や死因に関係なく判明した事実を伝えなければなりません。

つまり、買主・借主が「ここで過去に人が亡くなっていますか?」と質問すれば、仲介業者は知り得た事実を必ず教えてくれるのです。


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このように、買い手側が事故物件かどうかを確認・把握しやすくなったことで、不安や不信感も軽減されやすくなります。

心理的瑕疵の定義も明確化されたため、「何となく怖いから古い物件は避ける」といった過剰反応も減っていくでしょう。

買い手は今後、「自然死があった程度であれば気にしない」という合理的な選択がしやすくなるわけです。

「告知事項あり」と表示された物件についても、具体的に何があったのかを業者に尋ねることで、納得した上で購入判断ができます。

昨今でも事故物件であることを隠され契約した結果、後から訴訟になったケースこそありますが、ガイドライン遵守が定着していくことにより、そうした悪質な隠蔽が発生しにくくなる効果も見込まれます。

つまり現段階でも、買い手は必要な情報にアクセスしやすく、不要な不安を抱えず取引に臨める環境が整いつつあるといえるのです。

売り手の場合

売り手(不動産の売主や賃貸オーナー)の心理面でも、改善が見込まれます。

最大のメリットは、何を告知すべきで何を気にしなくてよいかがはっきりしたこと。


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従来、オーナーは「過去に入居者が亡くなったら一律アウト」と考えがちで、高齢者の入居自体を敬遠しがちでした。

しかし、ガイドラインで自然死や日常的な事故死は告知不要と整理されたため、オーナー側の過度な心配が和らぎます。

極端にいえば、「高齢の入居者がもし部屋で静かに亡くなっても、それだけでその部屋の価値が下がることはない」と示されたわけです。

こうした流れは今後の賃貸経営において、単身高齢者や病気を抱えた方への偏見を減らし、空室対策にも良い影響を与えると思われます。

一方、売買物件や重大事故の場合でも、ガイドラインが指針を示してくれたため、安心感が広がりました。

たとえば、数年前に自殺事故のあった物件を売却したいケースでは、「いつまで告知しなければならないのだろう?」という悩みがありました。

賃貸では、発覚から概ね3年が経過した後は、原則として自殺事故の告知は不要とされています(事件性・社会的影響が大きい場合などを除く)。

一方で売買については、経過年数による明確な定めはなく、買主の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある場合には、期間を問わず告知すべきとされています。

実際、不動産売買は高額な取引であることから、30年前の事件でも買主にとっては重要な判断材料となり得ます。

売主が知っていながら隠せば後で損害賠償等の問題に発展しかねないため、たとえ昔のことであっても適切に説明する方が安全です。


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さらに、ガイドラインを遵守することは、トラブル発生時の防御線にもなります。

もちろんガイドラインは法律ではなく、あくまで「指針」です。

しかし、万一訴訟になった場合には裁判所もその内容を参照して判断する可能性が高いと考えられます。

宅建業者もガイドラインに沿って売主・貸主に告知事項の有無を確認する体制を整える体制に移行。

そこでオーナーも協力して正確に情報提供すれば、不必要な責任追及を避けることができます。

「どこまで知らせるべきか」について明確な物差しを得たことで、売り手の心理的負担が軽減されたといえます。

事故物件を正しく理解し、プロの力で失敗しない不動産取引を実現しよう

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2021年の事故物件ガイドライン改正によって、告知義務の基準がはっきりしました。

以前は「どこまで説明すべきか」が曖昧でしたが、今では明確な線引きがあり、取引の透明性が高まっています。


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しかし、新しいルールが社会全体に充分広がっているとはいえません。

せっかくの制度も、正しく理解し活用しなければ意味がないのです。

重要なのは、「知っているかどうか」ではなく、「どう使うか」です。

事故物件であっても、正確な告知と誠実な説明を行えば、買い手にとって安心できる物件になります。

一方で、事実を隠したり曖昧にしたりすれば、契約解除や損害賠償といったリスクに発展します。

こうしたリスクを避け、安心して取引を進めるには、経験豊富な専門家の力を借りることが大切です。

私たちVision Bridgeでは、ガイドライン改正や市場動向に基づいた実践的なアドバイスを行い、「安心して売る・安心して買う」ための支援を行っています。

不動産の売却や購入に不安を感じる方、判断に迷う方は、まず無料のプライベートコンサルティングを受けてみてください。

専門家と一緒に最適な対応策を考えることで、取引の不安を解消し、資産と信頼を守ることができます。