不動産投資家がやっておくべき金融機関の開拓方法

  1. TOP
  2. コラム
  3. 不動産投資家がやっておくべき金融機関の開拓方法

不動産投資を始めたばかりの方のなかには、物件を紹介された不動産会社から「この銀行が融資に強いですよ」とすすめられるままに、金融機関を選んでしまうケースも少なくありません。

しかし、不動産投資を安定的に続けていくには、紹介任せにせず、自分でも融資先を確保しておくことが大切です。

不動産の購入には多くの場合、金融機関からの融資が必要となります。

あらかじめ金融機関から内示(仮承認)を得ておけば、不動産会社にも「この条件で融資が受けられる」と示すことができ、未公開物件などの好条件な情報を得やすくなるというメリットもあるのです。

この記事では、不動産投資家として取り組むべき金融機関開拓の方法について詳しく解説します。

【執筆者】東将吾

株式会社Vision Bridge 専務取締役 /COO
不動産コンサルタント

東 将吾(Higashi Shogo)

大学卒業後、新卒で東証一部上場企業の商品企画、マーケティング職を経験。その後、大手出版社にて企画営業に従事する。2017年に売買仲介をメイン事業とする不動産会社に入社し、賃貸管理事業部の責任者としてゼロスタートから投資家100名超、約2,000戸の物件運営に携わる。その後同社執行役員に昇格し、複数の新規事業を牽引。IT×不動産、企業DXを推し進める。 2022年に株式会社Vision Bridgeを設立し専務取締役に就任。

不動産投資家が金融機関を開拓するタイミング

不動産投資を始めたばかりの方に多いのが、物件を先に探し、あとからローンを申し込もうとするケースです。

しかしこの流れでは、希望する物件が見つかっても審査が間に合わず、購入のチャンスを逃してしまう可能性があります。

融資審査には、書類の提出や社内稟議など一定の時間がかかるためです。

そこで重要になるのが、物件探しよりも先に金融機関に相談し、「いくらまで融資できるか」という内示をもらっておくことです。


不動産コンサルタント
東 将吾

あらかじめ内示があれば、物件が見つかり次第すぐに買付やローン申請へ進めるため、スピードが求められる不動産取引でも有利に動けます。

また、融資の目安が明確であれば、不動産会社側からも「購入意思がある投資家」と判断され、好条件の物件を紹介してもらいやすくなる利点もあります。

特に物件が多く出回る年明け〜3月に内示を複数取得できるよう、遅くとも秋頃から準備を始めるのが理想です。

金融機関を開拓する前に準備しておくこと

不動産投資家として金融機関を開拓する前には、信用力や計画性を整理するための事前準備が欠かせません。

特に次の2点は、融資審査をスムーズに進めるうえで重要なポイントです。

確認しておきたいポイント

・プロフィールシートの作成
・相談に必要な書類の準備

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

プロフィールシートの作成


不動産コンサルタント
東 将吾

金融機関に融資の相談をする際は、自分の信用力を正確に伝えることが出発点となります。

その際に役立つのが「プロフィールシート」です。

収入や資産、職歴や投資経験などが整理して記載されたA4用紙1枚のようなわかりやすいシートを作ることで、担当者に対して自身の計画性や実現可能性を具体的に示しましょう。

プロフィールシートに記載すべき主な内容は、以下の表のとおりです。

項目 記載する内容の例 金融機関が見るポイント
氏名 フルネーム(漢字・ふりがな) 書類の正式性と身元確認。登記や融資契約で一致が必要
年齢 西暦生まれ/満年齢 返済完了年齢との兼ね合い。若すぎても高齢でも審査に影響する
家族構成 配偶者・子の有無(人数) 扶養人数から生活費を逆算。生活余力を測る指標
職業 会社員・公務員・医師・フリーランスなど 職種の安定性を見る。士業・医師などは信用性が高い
勤務先名 勤務中の企業名・法人名 上場企業・大手・官公庁は加点要素。企業規模も参考にされる
所属部署・役職 営業部 課長/総務部 一般社員 など 社内地位・収入の裏付け情報として活用
勤続年数 ○年○ヶ月在籍 勤続3年以上が評価ライン。転職直後は不利になりやすい
年収 源泉徴収票の支給額(例:720万円) 主たる返済能力の基礎指標
副業・副収入の有無 あり/なし。ありの場合は収入額と内容(例:民泊収入 年120万円) 継続性・事業性・グレーゾーンか否かを慎重に判断
預金残高 普通預金:500万円/定期預金:300万円など 自己資金の源泉・投資の頭金・信用担保として機能
保有資産 自家用車、他の不動産、有価証券、現金など 総合的な資産背景。担保として評価されることもある
自己資金の予定投入額 今回の投資に充てる金額(例:600万円) リスク共担性の判断。金融機関が融資姿勢を決める重要要素
借入状況(金融機関名) 住宅ローン(○○銀行)、教育ローン(△△信金)など 借入過多かどうか、信用情報の裏付け
借入残高と返済額 総残高・月額返済額(例:残2400万円/月8万円) 毎月の返済負担率。新たなローンとのバランスが見られる
延滞履歴の有無 なし/あり(※ありの場合は時期・内容を明記) 延滞経験があると信用が大きく下がる。ありの場合は背景説明が必要
投資経験の有無 あり/なし(ありの場合は物件数・購入年・所在地を記載) 不動産の理解度・実績による信用強化(未経験でもマイナスではない)
保有中の物件情報 1棟アパート(横浜市・築15年・2019年購入)など 賃貸収入の把握・担保評価・過去実績の信頼性を評価
今回の投資目的 節税/資産形成/キャッシュフロー改善/相続対策 など 目的の明確さで事業性を判断。抽象的すぎると印象が弱くなる
将来の法人化の可能性 資産管理法人を今後設立予定/検討中/現時点では個人名義のみ 事業継続性の意思として受け止められ、法人窓口への誘導が得られることもある

こうした情報を簡潔にまとめたプロフィールシートがあるだけで、金融機関からの信頼を得やすくなり、融資判断のスピードや対応も格段に向上します。

相談に必要な書類の準備


不動産コンサルタント
東 将吾

初回相談の前には、プロフィールシートに加えて、金融機関に対して信用力の裏付けとなる書類もそろえておきましょう。

融資の可否を判断するうえでは、収入の実態や資産の状況、過去の取引履歴などを確認するための具体的な資料が求められます。

代表的な必要書類とその役割は、以下の表のとおりです。

書類名 該当者・備考 評価ポイント
確定申告書(過去3年分) 自営業・副業がある方 収入の継続性や納税状況の確認に使われる
源泉徴収票(直近1年分) 会社員の方 給与収入の裏付け資料として最も信頼される
納税証明書(その1・その2) 税務署で取得 未納・滞納の有無を確認するために使われる
通帳コピー(直近6か月〜1年分) 預金通帳(紙でもオンラインでも可) 預金額だけでなく、入出金の流れも評価対象
既存ローンの償還表 他ローンを返済中の方 現在の借入残高や返済額を把握するために必要
物件概要書(過去の検討物件でも可) 手元にある物件資料などで可 自己資金とのバランスや収益性を伝える参考資料として活用可能

こうした資料をひと通りそろえて持参することで、金融機関からの信頼度が高まり、スムーズな審査につながりやすくなります。

金融機関を開拓する手順

金融機関を開拓する際は、ただ訪問して相談するだけでなく、投資家として信頼を得るための手順を意識することが大切です。

以下の流れを踏んでおくことで、融資の可能性を広げながら、チャンスを逃さず動ける態勢を整えられます。

確認しておきたいポイント

銀行へ行き「不動産の融資は可能か」を相談する
・プロフィールシートを使い、自分の年収や資産、買いたいエリア・物件価格を伝える
・融資の条件(上限金額や金利、期間など)を聞く
継続的に相談できるよう、口座や定期預金を活用して窓口を確保する
・物件資料を出せばすぐ融資検討に入れるよう、関係性を築いておく


不動産コンサルタント
東 将吾

このように、計画性と準備を持って行動すれば、初めての相談であっても「条件次第で融資可能」といった前向きな評価につながりやすくなります。

信頼関係の構築を意識しながら、継続的に関係を築いていくことが、金融機関との取引を安定させるカギです。

不動産投資家が金融機関を開拓する際に抑えておくべきポイント

金融機関の開拓を行う際は、相談の進め方だけでなく「どこを押さえるか」を理解しておくことも重要です。

不動産投資家として金融機関と良好な関係を築くためには、以下の点を事前に押さえておきましょう。

確認しておきたいポイント

金融機関が融資したい人・融資したくない人を把握しておく
地元の信用金庫・地方銀行から開拓する
複数の銀行・支店と付き合うことを前提に開拓する

ここからは、それぞれのポイントを詳しく解説します。

金融機関が融資したい人・融資したくない人を把握しておく

金融機関は、年収が安定し、資産背景や納税状況に問題がない方に対して積極的に融資を行いたいと考えています。

つまり「この人なら貸しても安心」と思ってもらうことが大切です。

そのためには、プロフィールシートを活用して、自分の属性情報を明確に伝える必要があります。


不動産コンサルタント
東 将吾

しかし、こうした「プロフィールシート」のような資料をしっかり用意して面談に臨む投資家は、実際にはごく一部(全体の3割未満程度)に限られています。

だからこそ、収入や資産、既存ローンの状況を整理し、納税履歴も確認できる状態にしておくことで、信用金庫や地方銀行でも前向きな判断を得られる可能性が高まるのです。

地元の信用金庫・地方銀行から開拓する

信用金庫や地方銀行は、地域密着型の金融機関です。

同じエリアに住んでいる方や、その地域内の不動産に対して融資を行うことを得意としています。

各営業エリアの経済活動や不動産価値を把握していることが多いためです。


不動産コンサルタント
東 将吾

たとえば、川崎市に住んでいる方なら川崎信用金庫、横浜市であれば横浜信用金庫や湘南信用金庫が代表的であると考えましょう。

地元の不動産事情に詳しいため、全国展開のメガバンクに比べて柔軟な判断をしてもらえることもあります。

不動産投資を始める際は、まず自宅や投資エリア周辺の信用金庫・地銀にアプローチするのが効果的です。

金融機関の対応エリアからが遠い物件の場合は融資が難しくなるので注意

信用金庫や地方銀行の融資を受ける際は、物件の所在地が対応エリアに含まれているかを確認することが重要です。


不動産コンサルタント
東 将吾

たとえば東京から岐阜など自宅から離れた場所にある物件の場合、現地の管理体制や情報把握が難しいことを理由に、担保評価やリスク管理がしづらく、融資を断られるケースがあります。

特に営業圏外の物件については、審査自体が通らない場合もあるため注意が必要です。

投資先を選ぶ際は、金融機関の対応エリアとの整合性も含めて検討するようにしましょう。

複数の銀行・支店と付き合うことを前提に開拓する

不動産会社が付き合っている金融機関と、自分が開拓している金融機関が異なるケースは少なくありません。

不動産会社が取り扱う物件の種類や過去の融資実績に応じて提携先が限られているためです。

そのため、自分でも複数の銀行や信用金庫を開拓しておくことで、より有利な条件で融資を受けられる可能性が広がります。


不動産コンサルタント
東 将吾

また、同じ金融機関であっても、支店ごとに融資の方針や判断基準が異なることがあるため、自宅や勤務先など、生活圏に近い支店には優先的にアプローチしておきましょう。

複数の選択肢を持つことで、物件や状況に応じた柔軟な資金調達がしやすくなります。

たとえば、金利の安い金融機関を選んだり、購入時期を逃さずローン審査に入れたりといった判断が可能になります。

支店によって融資条件は変わるので複数の支店を回ろう!

同じ地方銀行であっても、支店ごとに融資方針が異なることは珍しくありません。

各支店の担当者や支店長の裁量、地域特性などにより判断基準が変わるためです。


不動産コンサルタント
東 将吾

たとえば、ある支店では融資の取り組みが可能でも、別の支店ではお断りされるといったケースもあります。

このため、ひとつの支店だけで判断せず、複数の支店に相談して比較する姿勢が大切です。

なかでも「自宅や勤務先の最寄り支店」と「物件所在地に近い支店」の両方に口座を持っておくと、相談の選択肢が広がり、より柔軟な資金計画が立てやすくなります。

不動産会社任せではなく、自分でも金融機関開拓を行おう!

不動産投資を成功させるためには、良い物件を探すだけでなく、融資を受けるための準備や金融機関との関係づくりも欠かせません。


不動産コンサルタント
東 将吾

紹介された金融機関に任せきりにするのではなく、自分自身でも複数の金融機関を開拓し、事前に内示を得ておくことが、スムーズな資金調達と物件選定につながります。

プロフィールシートや必要書類を整えたうえで、地元の信金や地銀、複数の支店に働きかけることが、融資条件の比較や金利交渉を有利に進めるためのカギとなるでしょう。

株式会社Vision Bridgeの提供する「一棟不動産専門・プライベートコンサルティング」では、金融機関との交渉支援から物件選定、契約、購入後の管理や売却まで、すべてを一貫してサポートいたします。

「自分で動く」姿勢を持ちながらも、的確な判断を支えるプロの知見が必要な方は、ぜひ一度、無料コンサルティングをご利用ください。