個人投資家が見落としがちな一棟不動産購入時の注意点

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一棟マンションや一棟アパートなど、一棟収益不動産の投資は利回りや資産価値の高さなどから投資家にとっては魅力的な選択肢の1つとなっています。

しかし、魅力的な反面、区分所有の物件と比べて、建物全体の維持・管理や、融資の条件などを自分でコントロールしなければならないため、慎重に選定しないと大きな損失につながる可能性があるのです。


不動産管理コンサルタント
東 将吾

弊社にも、一棟収益不動産を購入してから自身の判断ミスに気づいた、というご相談が多く寄せられます。

実際に、一棟収益不動産を購入した後に「しまった!」と気づいてしまっても対処できる範囲が限られてしまうので、物件購入前にしっかりと見極めることが重要です。

今回は、そんな一棟収益不動産の物件に関してよく弊社に来る相談内容などを踏まえ、ついつい個人投資家が見落としてしまいがちなポイントや注意点についてプロが詳しく解説します。

【執筆者】東将吾

株式会社Vision Bridge 専務取締役 /COO
不動産コンサルタント

東 将吾(Higashi Shogo)

大学卒業後、新卒で東証一部上場企業の商品企画、マーケティング職を経験。その後、大手出版社にて企画営業に従事する。2017年に売買仲介をメイン事業とする不動産会社に入社し、賃貸管理事業部の責任者としてゼロスタートから投資家100名超、約2,000戸の物件運営に携わる。その後同社執行役員に昇格し、複数の新規事業を牽引。IT×不動産、企業DXを推し進める。 2022年に株式会社Vision Bridgeを設立し専務取締役に就任。

失敗しないために知っておくべき一棟不動産購入時の注意点

ネットやSNSでも「一棟不動産購入時の注意点」などの情報が多く出ていますが、実際に弊社に「一棟不動産を購入して失敗した」と相談に来られる方の相談内容などを聞いていると、一般的に紹介されているような注意点だけでは不十分と言えます。

個人ではなかなか調べても出てこないような事が実は後々リスクとなる場合もあるので、次のような項目を一棟不動産購入時には注意しましょう。

  1. 表面利回りだけを鵜呑みにしない
  2. 物件の立地と賃貸需要を調査する
  3. 築年数と修繕履歴を必ずチェックする
  4. 融資条件を安易に判断しない!慎重に比較する
  5. 空室率を過小評価しない
  6. 近隣の家賃相場と比較する
  7. 将来的にかかる税金や維持コストをしっかりと試算する
  8. 入居者の質と滞納リスクを考慮する
  9. 越境についてチェックする
  10. 境界についてチェックする
  11. 通行や掘削に関する権利関係をチェックする

それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。

1.表面利回りだけを鵜呑みにしない

これは一棟収益不動産に限った話ではありませんが、表面利回り(年間家賃収入 ÷ 物件価格)だけを見て「魅力的」と思ってはいけません。

賃貸管理費や、建物管理費、募集費用、修繕費用、ランニングコストなどのコストをすべて差し引いた「実質利回り」を把握することが重要です。
また、実質利回りを把握するだけでも不十分です。


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実質利回りが良くても、それは一時的に満室だから良いだけ、という場合もあります。

その場合、購入後に入居率が低くなれば、その分手元に残るお金が少なく、キャッシュフローは安定しません。

そのため、直近3年ほどの入退去履歴を見て、リアルな入居状況の確認を行い、リアルな実質利回りを試算しましょう。

「高利回りだからお得」という先入観に惑わされることなく「現実的な入居状況で、どれだけ安定したキャッシュが手元に残るか?」という観点でシミュレーションすることが大切です。

確認すべきポイント

・過去の稼働率(入居率)はどれぐらいか?(できれば過去3年分程度の入退去履歴を確認)
・管理費や修繕積立金、滞納リスクを含めた実質利回りをシミュレーションしたか?
・築年数や設備の老朽化による追加コストは想定できているか?

2.物件の立地と賃貸需要を調査する

不動産投資でよく言われる「駅から近い方が良い」「利回りが高い郊外が狙い目」など、色々な立地選びの観点があると思いますが、一棟収益不動産の場合には、安易に「これだから良い・悪い」と判断してしまわずに、物件の立地と賃貸需要をしっかり調査することが大切です。

具体的には次のような観点で物件の立地と賃貸需要を総合的に判断していくことが重要です。

  • 最寄り駅までの近さだけではなく、物件のターゲット層(学生・単身・ファミリーなど)に合った周辺環境かどうかも重視すべき
  • 人口減少エリアや競合物件が過剰なエリアでないかも調査する(利回りが最初は高く見えても長期的に空室リスクが高まりやすい)
  • 自治体の街づくり計画や再開発計画をチェックし、将来的な賃貸需要変動を読む

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もちろん駅近であることは重要なのですが、ファミリー層向けの一棟収益不動産で、駅近で好立地であったとしても、周辺にスーパーやドラッグストアがあまりない地域だと、ファミリー層に敬遠されやすく、将来的に空室リスクが高まりやすくなります。

「こういう条件の不動産は安心」という不動産投資ノウハウだけで一棟収益不動産を選んでしまうと、思わぬ見落としが出てきたりするので、十分注意しましょう。

確認すべきポイント

・徒歩10分以内かつ、周辺の商業施設・学校・病院などの生活インフラの状況がターゲットと合っているか?
・エリアの人口動態(若年層が多いか、高齢化率はどうか、過去10年どのような変化をしてきているか、など)はどうか?
・賃貸需要のターゲットと物件仕様が合っているか?

3.築年数と修繕履歴を必ずチェックする

築年数が古いほど物件価格は安くなりますが、その分物件自体の維持・修繕にコストが思った以上にかかる可能性があります。

将来的な大規模修繕費用などを見込んでもなおしっかりと収益が出る物件でなければ、購入後に損をしてしまうリスクがあるので、必ず過去10年分の修繕履歴(外壁、屋上防水、給排水管など)をチェックし、大規模修繕の可能性などを見極めましょう。


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築古物件は確かに価格が安いのでお得ですが、個人投資家が見落としがちな項目も多い傾向があります。

購入後に思わぬ大きな出費が出てしまうとせっかくの「築古物件=安い」というメリットが薄れてしまうので、購入前にしっかりと将来的な出費の可能性も見込んでおくことが大切です。

また、1981年以前(旧耐震基準)の物件は、ローンを組む際に融資条件が厳しくなってしまったり、耐震面でのリスクも高いので要注意です。

確認すべきポイント

・旧耐震基準の物件ではないか?(融資・耐震リスク)
・過去10年分の外壁や屋上防水、給排水管などの修繕履歴はチェックしたか?
・エレベーターや給湯器、空調などの交換時期が迫っていないか?

4.融資条件を安易に判断しない!慎重に比較する

金融機関から融資を引いて一棟収益不動産を購入するのが一般的です。

一棟収益不動産の場合、融資額も多くなるので「金利が低ければお得」「融資期間は短くした方が良い」などの基準で金融機関を選んでしまうのは少々危険です。

たとえば、金利の低さだけで選んでしまって、結果的に返済期間や返済比率が合わずにキャッシュフローが苦しくなってしまったり、金利上昇や空室リスクなどを考慮せずにフルローンやオーバーローンを組んでしまって結果的に資金繰りが悪化してしまうなど、将来的に苦しくなってしまう可能性があります。

融資条件を安易に判断せず、各金融機関の審査基準を含め、いくつかの銀行や信用金庫を比較して検討しましょう。

確認すべきポイント

・金利は固定・変動どちらが適しているか?
・融資期間と返済比率のバランスは良いか?(毎月の手残りが十分かどうか?)
・複数の銀行、信用金庫で比較・検討したか?

5.空室率を過小評価しない

不動産屋さんから「この物件は今満室です」と聞くと、「この物件は大丈夫だ」と安心してしまいがちですが、あまりその言葉を信じすぎないようにしましょう。

なぜなら、「満室」であったとしても、実は家賃を大幅に下げているケースや、サブリース契約で一時的に入居が安定しているケースもあるからです。

もちろん購入時に満室であるには越したことはありませんが、チェックすべきは「購入時に満室か?」よりも、空室が出た際に「すぐに次の入居者が決まるかどうか?」です。

そのため、過去3年ほどの入退去者の推移を必ずチェックして、空室が出た際に平均的にどれぐらいの期間で次の入居者が決まっているのかを見極めましょう。


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たとえ購入時に満室ではない物件であっても、過去3年の入退居履歴を見て、空室がすぐ埋まるようであれば、物件購入後も安定した入居率が期待できます。

一方で現在満室であったとしても、過去3年の入退居履歴を見て、空室が長期化している傾向にあれば、何らかの意図によって満室が作られていたり、一時的に満室なだけであって、空室リスクが高い物件と見極めることができます。

某芸能人が、一棟不動産を購入した途端に全員退去されてしまうなどの被害を受けたことが話題となりましたが、こういった騙されるリスクも過去の入退去履歴などを見極めることである程度予防することができます。

投資家が気にするべきは、今満室かであるかよりも、空室が将来的に長期化しないかどうか、です。

空室が長期化すると、家賃収入減や、入居者募集の広告費用などがかさみ、キャッシュフローに大きなダメージを与えてしまいます。

確認すべきポイント

・過去の入居率・空室率の推移(直近3年分程度)
・周辺物件との家賃比較(安すぎないか、高すぎないか?)

6.近隣の家賃相場と比較する

購入を検討している一棟収益不動産の家賃設定も購入時に気を付けるべきポイントの1つです。

「今現在設定されている家賃が、近隣の家賃相場と比較して妥当かどうか」を判断するだけではなく、「将来的に家賃が維持、もしくは上げられる見込みがあるか」についても物件購入前に見極めておく必要があります。


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たとえば、物件購入後に空室が出てなかなか入居者が決まらない場合、家賃を下げて募集をかけたりしなければなりません。そうすると、最初に見込んでいた収益計画を大きく下方修正しなければならなくなります。

また人口減少地域などの場合、年を経るごとに周辺の家賃相場が下がっていくリスクが想定されます。その場合、入居を安定させるために、それに合わせて家賃を下げなければなりません。

このように周辺の家賃相場の変動によって、一棟不動産購入後に損をしてしまうケースもあるのです。

たとえば自治体が街づくりや再開発に力を入れているエリアであり、将来的な家賃の維持・上昇が見込める場所であればベストですが、逆であれば今はよくても将来的に損失を被ってしまうリスクがあります。

7.将来的にかかる税金や維持コストをしっかりと試算する

一棟収益不動産を購入する際には、購入費用だけではなく、その後かかってくる税金や維持管理費などあらゆるコストを想定してシミュレーションしておく必要があります。

たとえば、一棟不動産購入後にかかってくる固定資産税ですが、「毎年同じ金額」と勘違いして思わぬ出費に悩まされるケースもよくあります。

実際には、数年ごとに固定資産税評価額は見直され、税額が上がる可能性があるのです。

また、税金以外にも火災保険などの保険関連や、エレベーター付き物件の共用部の電気代や定期点検費用など、維持コストの中にも年々上がりやすいものが存在します。

これらの税金や維持コストを「同じ金額」ではなく「年々上がっていく」という想定でシミュレーションしておきましょう。

確認すべきポイント

・固定資産税、都市計画税
・エレベーターや機械式駐車場を含む共用部の管理費、電気代
・火災保険、地震保険

8.入居者の質と滞納リスクを考慮する

不動産会社から「この物件は満室です」と言われると、入居に関して心配なさそうに思えますが、たとえ満室であったとしても家賃の滞納常習者が多ければ一棟不動産物件の収支が一気に悪くなります。

また、入居者同士のトラブルの発生しやすさなども将来的な入居率の低下を招く原因となります。

「購入時の入居率」だけではなく、現在の入居者のステータス(年齢層など)や、家賃滞納の状況、過去の家賃滞納の有無なども調べておくことが重要です。

同時に管理会社が家賃滞納時にきちんと督促をしたり、長期滞納の場合は法的対応をしているかどうかなども確認しましょう。


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入居者トラブルの有無は特に懸念すべきです。

数字に出てこない要素なので、見落としがちになってしまいますが、入居者トラブルが頻繁に発生してしまう物件だと、悪い噂が立ち、空室が出た時に埋まりにくくなってしまう可能性があります。

確認すべきポイント

・現在の入居者層のステータス(年齢、職業など)
・家賃滞納率や過去の滞納の有無、滞納処理の実績
・近隣エリアの治安や犯罪発生率

9.越境についてチェックする

一棟収益不動産を購入する際に見落としてしまいやすいのが「越境」です。

塀やフェンス、建物の庇や屋根、排水管などが隣の土地へ越境していないか、もしくは隣の土地のものが自分の土地に越境している場合は注意しましょう。

購入時点では問題なくても、後々隣人から「越境している」というクレームが入ったり、訴訟に発展するなどのトラブルになるリスクがあります。

また、将来的に売却しようとした際に越境やそれに関する隣人トラブルの発生が理由で買い手がつきにくくなる場合が想定されます。

越境リスクについては事前にしっかりと確認しておきましょう。

なお、越境しているものがあったとしても、事前に隣人などと越境部分の使用や撤去についての書面(合意書・覚書など)が交わされている場合は問題ありません。


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越境部分について口約束でお互いに容認している場合は、今はよくても将来的に隣の土地の所有者が変わったり、将来何らかの事情で関係が悪化した際に無効となってしまうため、必ず書面で合意しておくことが重要です。

たとえば、物件購入後に隣の土地の所有者が変わり、越境部分の撤去費用や場合によっては損倍賠償を求められることもあるのです。キャッシュフローの大きな損失につながってしまうので「これぐらい大丈夫だろう」などで、決して軽視すべき問題ではありません。

確認すべきポイント

・越境の有無
・越境に関する過去のトラブルの有無
・越境部分の使用や撤去に関する合意書の有無

10.境界についてチェックする

物件には必ず「ここからここまでがこの物件の土地ですよ」と隣接する土地との境界が決められているものです。

しかし、物件によっては隣の土地との境界確認が取れていない、またはあいまいな場合があります。

境界確認書や測量図がない場合には要注意です。

購入時点で問題になることはありませんが、境界があいまいな物件を購入すると、ふとしたタイミングで隣接する土地の所有者から「ここは私の土地だ」「構造物が数センチ境界よりも越境している」などの指摘を受け、境界確定訴訟に発展してしまうリスクがあります。


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フェンスやブロック塀、庇(ひさし)や排水管などが越境していると指摘され、訴訟に発展するケースもあります。その場合、訴訟費用や、撤去や移設などで思わぬ費用が発生してしまう可能性があるのです。

キャッシュフローが大きく圧迫されてしまうため、購入前に境界がしっかりと定まっているか、物件の構造物が隣接する土地に越境していないかどうかはチェックするようにしましょう。

また、境界がはっきりしていないと「建築確認申請」ができず、将来的に大規模修繕を行いたくても行えなかったり、将来的に売却をする際に境界が不明確なこと原因で買取希望者への融資が受けづらくなり取引自体が成り立たないなどの問題も出てきます。

売却の際に「境界が不明確だから」という理由で価格交渉が不利になり、大幅な値下げを余儀なくされる可能性もあるのです。

確認すべきポイント

・境界確定書や測量図があるか
・測量図と実際の物件の整合性が取れているか
・過去の境界や越境に関するトラブルがあるか

11.通行や掘削に関する権利関係をチェックする

一棟収益不動産を購入する際に、境界や越境などと同様に見落としがちなのが通行や掘削に関する権利関係のチェックです。

土地に隣接する道が公道ではなく私道の場合は後々に権利関係が問題になる可能性があるので要注意です。

たとえば、築古物件で配管の劣化による詰まりや漏れが頻発してしまった場合には、地下に埋まった配管を交換したり、漏水部分を修繕したりする工事が必要になります。

その際に隣接する私道所有者が「通らせない」「私道部分の掘削を認めない」と言ってきた場合、修繕費が膨大になるか、または工事そのものを行うことができなくなってしまう可能性があるのです。

また、私道がゴミ置き場になっている場合は撤去を求められたり、私道の通行などが制限されてしまったり入居者の生活自体にも影響が出てしまいます。

結果的に、道路問題によって客付けが難航してしまったり、売却時に融資がつきにくくなるなど大きな損失につながってしまう可能性があります。

そうならないためにも、以下のような確認は必ず購入検討時に行っておきましょう。

確認すべきポイント

・隣接する道が公道か私道かの確認
・私道部分の所有権や持分がどうなっているのかの確認(通行や掘削の承諾)
・地役権の設定の有無の確認(隣の土地を通らなければならない場合などは、通行地役権が設定されているかどうか、図面や契約書、登記簿謄本で確認)

一棟収益不動産を安易に購入しないように注意しよう!

一棟収益不動産の投資は、利回りがよく資産性が良いメリットがある反面、知識もなく、安易に不動産営業マンの言われるがままに購入してしまうと、大きな損失につながってしまう可能性があります。

一般的に言われているような不動産購入時のチェックでは不十分な可能性があります。

今回は実際に弊社に寄せられた一棟収益不動産購入者からの相談内容などを元に詳しく、かつ具体的に注意点を挙げましたが、それでも十分とは言えない場合があります。

なぜなら、物件によって置かれている状況は異なるからです。

知識がなくて判断が難しい場合には、弊社にお気軽にご相談ください。


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東 将吾

弊社では一棟収益不動産投資を行う個人投資家向けにコンサルティングサービスを提供しています。

もし「一棟収益不動産を購入したいけれど不安」「購入する一棟収益不動産のどの点をチェックしたら良いかわからない」「すでに一棟収益不動産を持っているが想定していなかった問題が起きて困っている」などがあれば、弊社までご相談ください。