
賃貸物件のオーナーの中には、「リフォームやリノベーションをすれば家賃を上げられる」と考える方が少なくありません。
しかし、リフォームやリノベーションをしただけで家賃が上げられるわけではありません。
今回のコラムでは、リフォーム・リノベーションの本当の意味と注意点を整理します。

株式会社Vision Bridge 専務取締役 /COO
不動産コンサルタント
東 将吾(Higashi Shogo)
大学卒業後、新卒で東証一部上場企業の商品企画、マーケティング職を経験。その後、大手出版社にて企画営業に従事する。2017年に売買仲介をメイン事業とする不動産会社に入社し、賃貸管理事業部の責任者としてゼロスタートから投資家100名超、約2,000戸の物件運営に携わる。その後同社執行役員に昇格し、複数の新規事業を牽引。IT×不動産、企業DXを推し進める。 2022年に株式会社Vision Bridgeを設立し専務取締役に就任。
【結論】家賃はエリアと相場で決まる!リフォーム・リノベーションの有無は関係ない

家賃は、立地条件と地域の相場で決まります。
改装の有無が直接影響するわけではありません。
つまり、物件を豪華にしても、周囲の家賃水準を超えて設定するのは難しいのです。
改装に投資しても家賃が上がらないのが普通
水回りを入れ替えたり床をきれいにしたりしても、家賃表は相場を超えて動きづらいです。
入居希望者は周辺の同条件と見比べるからです。

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オーナーさんの中には「300万円かけてリフォームしたから、家賃を数万円上げられる」というように期待する方がいます。
しかし、現実はそこまで単純ではありません。
仮に300万円を投資して家賃が月5000円しか上がらなければ、年間の増収は6万円です。
利回りはわずか2%で、投資を回収するのに10年以上かかります。
しかも、その間に次の修繕や退去が発生すれば、さらにコストが増え、期待した収益どころか赤字になる可能性もあります。
つまり「リフォーム=家賃アップ」という図式は成り立たないのです。
外壁塗装やエントランスの化粧直しをすれば、確かに「見た目の安心感」にはつながります。
しかし、賃料そのものを押し上げる根拠にはなりにくいです。
リフォームの本来の目的は「利回り改善」

リフォームの目的は、家賃を上げることではなく、利回り(投資したお金に対してどれくらい利益が戻るかの割合)を改善することにあります。
数字で判断しなければ、かけたお金が無駄になってしまいます。
フルリノベで人気が出ても投資回収にはつながらない
フルリノベーションをすれば見た目はきれいになり、入居希望者が増えることも見込まれます。
しかし、あくまで「入居希望者が増えただけ」であり、家賃を大幅に上げられるわけではありません。

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問い合わせが増えても、最終的に契約する入居者は、相場に合わせて条件を比べます。
結果として「入居は決まるけれど、想定した高い家賃では借り手がつかない」という状況になりやすいのです。
たとえば800万円かけたフルリノベでも、家賃が月2万円しか上がらなければ、回収に30年以上かかります。
人気は出ても、投資としては失敗になる可能性が高いのです。
賃貸物件におけるリフォーム・リノベーションの本来の目的

オーナーがリフォーム・リノベーションで考えるべきことは、家賃アップのための工事ではありません。
オーナーが賃貸物件に関する改装で考えなければならないのは、次の内容です。
・新規入居を促す改装
・内見でマイナス評価を防ぐための改装
以下からは、オーナーが意識しておきたいリフォーム・リノベーションの本来の目的それぞれについて詳しく見ていきましょう。
新規入居を促す改装

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改装は本来、家賃そのものを上げるためではなく、空室期間を短くするために行うもの。
たとえば、モニター付きインターホンやインターネット無料の導入が例です。
こうしたインフラ設置は人気が高く、特に学生や単身者に効果があります。
特に学生エリアではネットがない物件は候補から外されやすく、結果的に2か月以上も空室が続くケースも。
空室が2か月長引けば、家賃6万円の部屋なら12万円の機会損失です。
逆に、10万円程度の費用で人気設備を導入すれば、空室が短縮されて元が取れる計算です。
家賃アップを狙うのではなく、空室を埋めやすくする目的で改装を選ぶことが重要です。
内見でマイナス評価を防ぐための改装
入居希望者が内見をしたときに「ここは嫌だ」と感じる要素をなくす改装を考えましょう。

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たとえば、古いユニットバスをセパレートにしたり、和室を洋室に変えたりする、ささくれ立った床を直す、などが挙げられます。
こうした工事は家賃を直接上げるものではありません。
しかし、入居希望者が「この部屋は古い」「不便そう」と思ってしまえば、契約に至らず空室が長引きます。
和室のままでは、学生や若い世代から敬遠されやすいもの。
ほかにもたとえば、洗濯機置き場が狭く設置に苦労した経験を持つ方は多いため、置き寸法が合わない物件というだけで候補から外されやすいです。
半年以上空室が続くケースも考えられます。

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さらに重要なのは、広告段階での影響です。
賃貸物件が掲載されるサイトでは「バストイレ別」「インターネット無料」「モニタ付きインターホン」などの条件で検索されることが多く、該当しなければ最初から一覧に表示されません。
つまり、リフォームをして条件を満たせば検索に残りやすくなり、問い合わせや内見の機会を増やせます。
逆に改装を怠れば、内見以前に候補から外され、検討すらされない危険があります。
結果的に、オーナーは家賃を下げるという方法しかとれないことも。
うまく入居が決まっても、年間収入が予測よりも数十万円減ってしまうことも起こり得ます。
つまり、マイナス要素を取り除く工事は、家賃を上げるためではなく「相場の家賃で確実に入居を決める」ための防御策なのです。
賃貸物件のリフォーム・リノベーションをする上で覚えておくべきこと

リフォームを考えるときは「家賃をいくら上げたいか」ではなく「かけたお金がどれだけ効率よく戻ってくるか」という視点を持つことが大切です。
リフォーム・リノベーションをする場合は、次の2つを必ず意識しましょう。
・かけたお金がどれだけ効率よく戻ってくるかを基準にリフォームする
・売却までを想定してリフォームする
以下からは、賃貸物件のリフォーム・リノベーションをする上で覚えておくべきことについて詳しく解説します。
かけたお金がどれだけ効率よく戻ってくるかを基準にリフォームする
リフォームをする前に必ず計算するべきなのは「投資利回り」です。

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目安として、年10%程度の回収が見込めなければ、合理的なリフォームとはいえません。
たとえば、300万円を投じて年間30万円の増収があるなら、回収率は10%です。
さらに、管理料や原状回復、入退去の入れ替えコストも足して、実質で判断することになるものです。
しかし、同じ投資で年間15万円しか増収がない場合は回収率が5%に落ち、資金の効率は悪くなります。
数字を確認せずに「とりあえずやってみよう」と改装すると、工事費の回収に長い年月が必要になります。
オーナーの手元資金が減るだけで終わってしまうのです。
適当にリフォームしてしまうと、結果として、次の修繕費用に対応できず、借入や売却に追い込まれるリスクもあります。
売却までを想定してリフォームする
リフォームは「出口」つまり物件そのものの将来の売却時を意識することも大切です。
売却の際、買主は見た目のきれいさだけでなく、物件の収益性や設備の状態を重視します。
たとえば、外壁を塗り直して見た目を良くしても、配管や水回りが古ければ、買主は修繕リスクを考えて価格を下げようとするもの。
逆に、配管の更新や水回りの改善など、長期的に維持が可能な改装があれば「安心して買える物件」として、何もしないよりも高い評価につながります。

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このような抜けや漏れは、内見時に必ず露呈するものです。
したがって、売却時には買主からも指摘されてしまいます。
「出口」を意識しないままお金をかけても、売却価格が上がらず、リフォーム代が回収できないケースは少なくありません。
売却時の査定に影響する改装を選ぶことが、投資として成功するかどうかを分けるのです。
リフォームは家賃アップの魔法ではない!利回り改善の相談はVision Bridgeへ

家賃は相場で決まるもの。
リフォームは、利回り改善や売却時の交渉材料となることを目的に考えるべきです。

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リフォームすべきかどうかの判断には、数字の理解や戦略が欠かせません。
Vision Bridgeのスタッフは一棟収益物件に特化し、これまで150棟・3,000室以上の購入や運営をサポートしてきました。
物件選びから融資アレンジ、法人設立支援、管理や売却までを一気通貫で支え、初回相談から成約まで費用は仲介手数料のみの完全成果報酬型です。
成約者には資産管理法人の設立費用を実質全額負担し、購入後の管理費割引も用意しています。
貸管理についても、一都三県を中心に空室対策や賃料見直し、コスト削減、滞納ゼロ運営などで収益最大化に貢献します。
もし空室が長引いている、家賃が伸びない、工事費が高い、管理会社が頼りないと感じているなら、数字に基づいた運営をVision Bridgeと一緒に設計していきませんか。